障害者が雇用される障害者枠、いわゆるオープン就労には20のメリットがあります。この20のメリットをそれぞれグループに分類すると、応募時、就労中、雇用先の3つに分けられます。今回は、応募時のメリットについてお伝えします。
応募時のメリット
オープン就労には、応募の段階ですでに10のメリットがあります。就活が苦手であっても、これから紹介するメリットを知ることによって、就活は難しくないという意識が芽生えるかもしれません。
未経験可
一般枠の中途採用において重視される、即戦力性や職務経験などのキャリアを応募者に求める求人は少なく、経験不問の仕事が多数あります。そのため、就労経験がない人であっても採用されることはあります。
多数の転職回数
一般的に転職回数が多いと再就職には不利と言われていますが、オープン就労の場合には転職回数が多くても採用されることがあります。採用する側も、メンタル疾患者や発達障害者の職歴は、転職回数が多いことを事前に理解していることも考えられます。
長期ブランク期間
体調不良や入院、就活の長期化によるブランク期間が、長かったり複数回あったりしても採用されるケースは多くあります。これは採用担当者が、メンタル疾患者や発達障害者の職歴には、長期のブランク期間があることを事前に理解している為だと考えられます。
年齢不問
世の中には、転職できるのは35歳までという転職35歳限界説がありますが、オープン就労の多くがそのこととは無関係であり、ミドル世代以上でも就職ができます。
そして、65歳未満までの利用が可能である就労移行支援事業所、略して、移行の存在を考えると、定年する65歳の1年前である64歳であっても就職が可能ということになります。
スキル不問
長く働き続ける上での健康管理、基本的なコミュニケーション能力、最低限のビジネスマナー、そしてパソコンを使う事務職などの応募ではワード、エクセルのスキルを求める会社はあります。
しかし、交渉力、企画力、折衝力、マネジメント能力、外国語などの高度なスキルがなくても応募できる会社が多くあります。そもそもですが、オープン就労では高度なスキルを必要としない求人が多数あります。
免許・資格不問
スキル不問と同じく、免許や資格を必要とする仕事は、オープン就労にはあまりありません。そのため、マイクロソフトのオフィスソフトの資格でありMOS資格や日商簿記の資格などを取得しアピールする応募者もいます。
高学歴を求めない
中途採用であれば、一般枠であってもそれほど高い学歴を求める求人はありませんが、オープン就労となると、それは尚更であり特にハローワーク障害者求人では、求める学歴として大学卒業はかなり少なく高校卒業以上が多くなります。
支援者の面接同行
就活中に移行などに通所し支援者がいる場合には、支援者に面接の同行をしてもらえ、一緒に面接を受けることができます。その際には、受け答えのフォローをしてもらえたり、支援者が応募者のアピールをしてくれます。
雇用する側も、障害者である応募者に定着支援員がいることで安心感をもつケースもあります。
大きな会社への就職
障害者雇用をしている会社というのは、そもそも大きな会社が多いので、一流、上場、大手企業へ就職できる可能性があります。大きな会社というのは、一般的に安定性や世間体などがあり、そこに就職できるということで一種のステータスを得ることもできます。
ホワイト企業
一般枠求人の中には、待遇の悪いブラック企業がある可能性がありますが、障害者雇用を行う会社の多くは、先ほどお伝えしたように大きな会社が多いです。そのため法令遵守ができており、福利厚生や働き方などで待遇の良い会社が多くあります。
就労中のメリット
入社できても、長く働き続けること、すなわち長期継続就労ができなければ意味がありません。この長期継続就労を目指すことを含めて、就労中のメリットを7つお伝えします。
通院の配慮
定期通院日にお休みや遅刻、早退ができます。有給が付与された場合は、通院日に有給を消化するケースが多く、まれに通院休暇を設けている会社もあります。
仮に4週に1度の通院のための休暇を頂ける場合は、あいた時間に身のリフレッシュや支援者との面談をすることもでき、より長期継続就労につながります。
服薬について
調子が悪い時や定期服薬のタイミングで、周囲を気にすることなく服薬できます。クローズ就労の場合には、服薬を見られてしまうと何かしらの疾患があるということが周囲にわかってしまう可能性があります。
障害特性の理解
障害特性上、仕事をする上で困難なことを理解してもらえます。例えば、電話応対が苦手であれば電話応対はやらなくて良い、もしくは電話応対のない部署に配属してもらえたり、感覚過敏で耳からの不要な情報を遮断するために、イヤーマフの使用許可をもらえたりできます。
この障害特性を理解していただくことを、合理的配慮を受けるとも言います。配慮とだけ言われることもありますが、この配慮がないと就労するのが難しいのでオープン就労で働く人は多くいます。逆を言えば、配慮が一切不要というのであれば、障害者であっても一般枠で働いていけるのです。
職場定着支援
定着支援機関や就労移行支援事業所が、職場に定着できるように何か問題があれば、会社との間に入って問題解決をしてくれます。その結果、自分で解決できない問題によって退職することがなく長期継続就労につながります。
クローズ就労でも定着支援をつけることは可能ですが、クローズ就労ということで支援員が職場へ出向くことや職場との間に入ることはできません。
定時勤務
残業、休日出勤についてはそもそもなかったり、あったとしても残業がたまにあるくらいです。そのため多くのオープン就労では基本定時勤務となります。
障害者として孤立しない
会社の中で、自分だけが障害者だと孤立してしまう恐れがありますが、多くの障害者を雇用している会社や特例子会社であればその恐れはなく、他の障害者と共に働くことができます。
逆に、障害者とは一緒に働きたくないと考える人は、オープン就労には向いていません。一般枠で働く、もしくは障害者は自分だけという部署で働かせてくださいと会社にお願いすることです。
障害者控除
会社が行う年末の年末調整の際に、障害者控除として27万円の控除を受けられます。オープン就労であれば、堂々とこの障害者控除を受けて会社側に年末調整をお願いできます。
しかし、クローズ就労だと、障害者控除を受けないか、自分で年度末に確定申告をして障害者控除を受ける必要があります。ちなみに、障害者控除を受けることは義務ではないので、クローズ就労で障害者控除を受けないという方法もあります。
雇用先のメリット
メリットというと、働く人だけのものだと思いがちですが、障害者を雇用する雇う側にもメリットは3つあります。
社会貢献度
障害者を雇用することにより、社会的に高い貢献度があることを示すことができます。近年、DE&I、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン、多様性、公平性、包括的な働き方の考えが広まっています。
そのような中、障害者に限らず、いろいろな人が働ける会社というのは、社会的に見て非常に優良企業だといえます。
助成金の支給
条件によりますが、障害者を雇用することにより、特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、障害者雇用安定助成金などの多くの助成金を受け取ることができます。また、障害者雇用調整金として、法定雇用率の超過障害者一人につき月額27,000円の支給があります。
障害者雇用納付金の徴収なし
障害者雇用率が達成できないと、障害者一人につき月額50,000円の障害者雇用納付金が発生しますが、障害者を雇用することによりこの徴収がなくなります。
有利な条件
これら、20のメリットは働く障害者にとって非常に有利な条件ですが、もちろんオープン就労はメリットだけではありません。しかし、自分に与えられた環境の悪いことばかりに目を向けるのではなく、良いことに目を向けていくことが長期継続就労につながります。
有利な条件とも言える、これら20のメリットのうち少しだけでも良いので、働きながらそれらを感じ取ることが大切です。
まとめ
- オープン就労には、20のメリットがあります。
- 20のメリットは、応募時、就労中、雇用先の3つに分けられます。
- 有利な条件であるメリットに目を向けて働くことです。